教授

ポール・アレン・クレイン

Paul Allen CRANE

専門:
応用言語学、英語教育学

経営学とサプライチェーン・マネジメントの学士号を取得。
ギャップイヤー(※)を利用して日本に留学したのですが、そこで日本が大好きになりました。大学卒業後は自動車業界で物流管理の分野で働き、最初はバイヤーとして、その後は生産・在庫管理マネージャーとして働きました。アメリカでも仕事で日本語を使っていましたが、自分の語学力に限界を感じて会社を辞め、日本語を勉強するために来日を決めました。日本では、今度は教えることが好きになり、転職を決意しました。応用言語学の修士号を取得した後、大学で教職に就き、それ以来ずっと日本で仕事をしています。

※ギャップイヤー…高校卒業から大学入学までの猶予期間(1~2年)のこと。海外の大学にある制度で、大学ではできない社会経験をすることが推奨されている

メッセージ

私は2歳の時に父にプールに放り込まれて、すぐに泳ぎを覚えました。私が小さいころから車がすごく好きなのを知っていた叔父から、ある日車のキーを渡され、"運転しろ!"と言われて初めて運転したのが12歳の時でした。初めてテニスをした時は、出されたボールを打ち返さなければなりませんでした。

この3つの状況に共通することは何だと思いますか?
どれも、本で読んだり誰かの説明を聞いたりするのではなく、たくさん練習することで身につけ、上達するスキルです。英語のような外国語に熟達するのも同じことです。それは教科ではなく技能だからです。ただ、英語はひとつの技能ではなく、読む、書く、話す、聞くという、相互に関連し合った技能の集合体です。そのため、上達には多くの時間と努力が必要です。でも、英語を「知っている」だけでなく「使える」ようになることで、その努力は報われます。

グローバル共生学科の英語教員チームは、皆さんがすべての英語スキルを向上させるために一緒に挑戦し、お手伝いします。

グローバル共生学科ならではの学びとは?

肉を食べるのが好きな人は少なくないですよね?
親子丼:おいしい! 焼肉:うっま! とんかつ:やっば!

だけど、私たちが好んで食べる肉は、土地や水、化学物質によって生態系に大きなダメージを与えていることを知っていますか?おいしいハンバーガー1個を作るのには2000リットル以上の水が必要なんです!

グローバル共生学科の英語の授業では、環境の持続可能性に焦点を当てて、リーディングの授業ではたとえば畜産に関するテーマで書かれた英語の文章を読み、ディベートの授業では議論し、ライティングの授業で学んだことをまとめたエッセイを書きます。これが、私たちがコンテンツ・ベースの統合カリキュラムと呼ぶものです。各英語科目で、1つのトピックやテーマに焦点を当て、英語の4技能を伸ばしながら、内容をより深く理解できるように学びます。

難しそうだけど、楽しそうでしょう?

専門分野

ある言語を話せるだけでは、その言語を教えることはできません。応用言語学は、言語学、第二言語習得、言語テスト・評価、教育心理学、社会言語学、心理言語学、教授法、そして言説分析などの分野を含む学際的な学問分野です。言語教育は学問分野として過小評価されがちですが、実際は想像以上に複雑な学問です。

私が特に興味を持っているのは、相互作用的コンピテンス(interactional competence)の育成です。相互作用的コンピテンスとは何か、少し説明します。一般的な会話やディスカッションを聞くとき、人はただ言葉を投げあっているのでしょうか?いいえ、そうではありません。

討論が行われる際には、いくつかの動きが同時に起こっています。まず、ディスカッションのトピックに対する方向性があり、多くの場合、達成すべき目標があります。そして、ディスカッションを成功させるには、多くの技術が必要です。例えば、話し手と聞き手が随時交代しながら発話する「ターンテイク」や、議論の明確化や修正を行っても理解が得られない場合のコミュニケーションの断絶の管理、他の話者への詳細な説明の促進などです。こういった技術のことを相互作用的コンピテンスと言います。

相互作用的コンピテンスの育成を研究する上で、私が最も興味があるのは、対話の共同構築を通して対話者間の協力がどのように行われるかということです。

学科で教えていること

グローバル共生学科の英語カリキュラムはコンテンツ・ベースで、複数のクラスが統合されています。リーディング、ライティング、ディベートの授業が4~5週間にわたって同じトピックに焦点を当てて行われます。具体的には以下のトピックを学びます。

女性の同一労働同一賃金、発展途上国における児童労働、観光と持続可能性、畜産業が環境に与える影響、同性婚、難民、原子力発電、死刑制度、安楽死、自衛のための武器、宗教の必要性、人工知能の発達など、さまざまな内容の英語のコースを教えています。さらに、グローバル・ガバナンスに関連した課外活動として、毎年、近畿大学で3日間にわたって開催される、英語での模擬国連会議に参加する学生を組織し、その準備を指導しています。

担当科目

  • グローバルな問題に対する批判的読解(Reading for Global Issues)
  • グローバルな問題に対するアカデミック・ライティング(Writing about Global Issues)
  • グローバルな問題に対するディスカッションとディベート(Debating on Global Issues)
  • 地域創生科目: ベトナム・プログラム

担当するゼミのテーマ

アメリカ文化と多様性

アメリカは日本よりはるかに若い国ですが、金融、ビジネス、テクノロジー、医療、航空宇宙、教育から、音楽、映画、メディアといったエンターテインメントなど、さまざまな分野で世界をリードするまでに発展しました。なぜこのようなことが起こったのでしょうか? 米国の成功と失敗の要因を、異なる文化を持つ他国の移民で構成される、人口の多様性に求める人もいるでしょう。

ゼミでは、多文化主義、多様性、差別、人種と人種差別、アイデンティティとアイデンティティ政治、「文化戦争」など、多様な国家に関連するさまざまなトピックを取り上げます。さらに、米国政治の時事問題や、貧困、人権、平等などの社会問題も取り上げます。

過去の学生の論文の例

  • GAFAの独占に関する一考察
  • アメリカの障害者について
  • アメリカ政治の分析 米国政治家の多様性を検証する
  • 反社会的人格障害
  • アジア系アメリカ人
  • バイリンガリズムと母語習得
  • アメリカの愛国心と日本の愛国心の違い
  • 日本におけるLGBTQ
  • 日本における移民
  • アメリカの移民の歴史
  • アメリカを象徴する重要なシンボル
アクティブ・ラーニング、グループワーク、ディスカッションは、クレイン・ゼミで大事にしている活動です
グループディスカッションを楽しむクレイン・ゼミの学生たち!
高野山でのフィールドワークを通じて、日本文化とアイデンティティへの理解を深めるクレインゼミの学生たち
夕食会でくつろぐクレイン・ゼミの学生たち

主な学術論文

  • The Effects of Reactive Implicit Negative Feedback To Promote Noticing and Interlanguage Development in a University EFL Classroom In Japan. Unpublished MA thesis, Aston University, 2001.(「大学EFLの授業における反応的暗黙否定的フィードバックの効果と言語発達」アストン大学修士論文)
  • “Texture in text: A text discourse analysis using Halliday and Hasan’s model of cohesion” 『名古屋外国語大学外国語学部紀要』第30号、2006年
  • “Developing EFL Learner’s Interactional Competence through Discursive Practice: A Longitudinal Classroom Study Using Mixed Methods,” International Journal of English Language Teaching, Vol. 11, No. 3, 2023 (共著)

最も影響を受けた人

両親は私の人生に最も影響を与えた人たちであり、もうこの世にはいないけれど、私はいつも両親の存在を自分の中に感じています。父は高校の歴史の先生、母は小学校の先生でした。2人とも、私と5人の兄弟を支えるために懸命に働いてくれたので、私は永遠に感謝しています。父は海軍に4年間勤務した後、大学に進学し、そこで母と出会いました。大学院を卒業後、2人は結婚し、私たち家族がスタートしました。

夕食後、両親は夜な夜な授業の準備をし、学生の授業や宿題を評価していました。夏休みには、キャンプをしたり、史跡や国立公園をめぐったりしました。そして、父がジェットコースター好きだったこともあり、毎年遊園地に行くなど、アメリカ中をよく旅行しました。

両親のありがたみに気づいた瞬間を、私は正確に覚えています。
大学1年生の時のある週末、私は実家に帰りました。その日曜日の夕方、車でキャンパスに戻る途中、突然両親への感謝の気持ちが溢れ出して感極まって赤ん坊のように泣き出し、涙で前が見えなくなったので道路脇に車を止めざるを得ませんでした。その瞬間から、両親に誇りに思ってもらえるよう、もっと勉強しようと心に誓いました。