教授、学科長、グローバル共生社会研究所長
小野 展克
Nobukatsu ONO
- 専門:
- 事業再生、金融政策、コーポレートガバナンス(企業統治)、マスメディア論
博士(経営管理)。慶應義塾大学卒。共同通信社の記者として大手銀行や財務省等を担当、経済部次長、日銀キャップ(日銀の金融政策や大手銀行の動向等を取材するチームのリーダー)を歴任。『JAL 虚構の再生』などのノンフィクションだけでなく『よこどり』などの小説も出版。高校生の時から記者志望で、なんでも見たい、知りたい、伝えたいという気持ちは今も変わりません。
メッセージ
「社長」と言われて、みなさんは、どんな人物を思い浮かべますか?
「その会社にずっといる中高年の日本人、しかも男性」ではないでしょうか。しかし、世界に目を向ければ、そのイメージは一変します。若くして巨大企業を創業した起業家、女性はもちろん、外国にルーツを持つ社長も大勢活躍しています。多様な背景を持った人で編成されたチームの方が、稼ぐ力があることが最新の研究でも明らかになってきました。グローバル共生こそが、成長とイノベーションの源泉なのです。
グローバル共生学科ならではの学びとは?
世界でも日本でも、多様な背景を持つ人々と共に働き、成果を生む人材を育成するのが、グローバル共生学科の目標です。そのために、学科の学びの特徴として、教員が一方的に話すだけでなく、学生同士でディスカッションをしたり、発表をしたり能動的に学ぶ仕組みを多くの講義で取り入れています。国内外のフィールドに飛び出して現地で問題意識を育む講義もあります。そこで大切なのは、みなさん自身がビジネスや社会のどこに課題があるのを発見し、解決に向けた「問い」を見つけることです。生成AIは、経済や社会に異次元の成長をもたらすことが期待される一方で、多くの人から仕事を奪うことが懸念されています。生成AIは「答え」を探り出すのは得意ですが、「問い」は、みなさんにしか創ることができません。
専門分野
事業再生、金融政策、コーポレートガバナンス(企業統治)、マスメディア論が専門です。
日本を代表する大手航空会社・日本航空は2010年に経営破たんしました。日本航空のように誰もが知る巨大企業ですら倒産することがあるのです。なぜ企業の経営が悪化し、どうすれば再生するのかを実際のケースを基に関係者への取材に加えて経営、金融の学問的な蓄積を活用して考察してきました。
最近ではコーポレートガバナンス(企業統治)に関心があります。「駄目な社長のクビを飛ばす」のが、企業統治の本質です。様々な企業の事例を取材し、研究を重ねることで、なぜ日本企業が「失われた30年」と呼ばれる長期停滞に陥ったのか、そこからどうすれば脱却できるのか考察を続けています。
学科で教えていること
「国際マスメディア」では、インターネットが浸透してSNSの利用が広がる中で、新聞やテレビ等のマスメディアが、社会や人々にどのような影響を与えるかを考察します。これまでの研究蓄積の学修に加えて、受講生には、グローバルに実施されたアンケートと同じ問いに答えてもらいます。受講生の回答を、他国の人々の回答と比較した時にどのような一致点と相違点があるのか、その背景に何かあるのか等を受講生自身で考え、講義の中で一緒に考察を深めていきます。
「グローバル経済論」では、AIやプラットフォーマーによって変化する最先端の経済やビジネスの動きを海外の研究者やジャーナリスト等が執筆した文献で学ぶ一方で、明治以降の日本経済の歩みを振り返ります。海外の事例を調べ、歴史から学ぶことで、未来の経済のありように接近します。
担当科目
- 国際マスメディア
- 共生ビジネス
- 日本理解の方法
- 政治学で読み解くいま
- グローバル経済論
- グローバル共生ゼミナールⅠ~Ⅳ
担当するゼミのテーマ
Greedy & Noble
これがゼミのキャッチフレーズです。
Greedyは、「強欲」と訳されることもあり、良いニュアンスで使われないケースも多い言葉です。ただ、グローバル化とデジタル化で世界の不確実性が高まる中、これをチャンスと捉え、貪欲に成長してもらいたいと考え、あえてGreedyを掲げています。一方で、Nobleは、高貴な心という意味で、社会への貢献を忘れず、多様な人々に、寛容で温かい眼差しを持つ大人になることを目指しています。
ゼミでは、多様性を前提にしながら、企業や組織の課題を把握し、実践的で活動的な学びと輪読などの研究、学修とを融合させ、問題解決に導く力を養成しています。
例えば、これまでマイナビ主催のビジネスコンテスト「課題解決プロジェクト」にゼミ内でチームを編成して挑戦しています。最大で900チーム以上が参加する中、例年、著しい成果を残しています。
「課題解決プロジェクト」受賞歴
- 2023年 全国900チーム中2位入賞!
- 2022年 全国543チーム中5位入賞
- 2021年 2チームが佳作に選出
- 2019年、2020年、2年連続で入賞
- 「SNS×動画×最高の旅行提案で解決する観光公害地域格差」
- 「Foogle 食べるだけで解決 AI×健康管理×食品ロス削減」
また、3年次の春休みに開催する「東京合宿」では、その道の最前線に立つプロの職業人たちと意見交換することで、社会人力を養います。
2024年2月には、ANA、文藝春秋社、テレビ東京、自民党 浅尾慶一郎参議院議員(議員運営委員長)を訪問しました。自民党の浅尾議員を訪問した際には、ゼミの学生チームが「岸田政権の掲げる『異次元の少子化対策』に若者の視点で考察した課題」をテーマにプレゼンテーションを実施しました。与党の経済政策の立案をリードする浅尾議員と学生たちが、2時間にわたってディスカッションを繰り広げました。
ANAの訓練施設「ANA Blue Base」を訪問した際には、施設見学に加えて、現役のキャビンアテンダントや広報担当者たちと意見交換しました。
主な著書
単著
- 『黒田日銀:最後の賭け』文春新書、2015年
- 『JAL:虚構の再生』講談社文庫、2014年
- 『企業復活』講談社、2007年
- 『よこどり』講談社、2020年(筆名・小野一起)
共著
- 「ハバード経済学 準備体操編」(共著、2015年3月、日本経済新聞出版社)
最も影響を受けた言葉
「この復興はいたずらに一都市の形態回復の問題に非らずして、実に帝国の発展、国民生活改善の根基を形成するにあり」
今から約100年前に関東大震災で壊滅した首都・東京の復興に向け、内務大臣の後藤新平が語った言葉です。日本中に絶望感が広がる中、後藤は大震災を日本が発展し、国民生活が改善する絶好の機会と捉え、世界に発信したのです。
今、世界中で紛争が多発、格差は拡大、自由民主主義すらも揺らいでいます。世界は、かつてより悪くなっていると感じている人も多いでしょう。一緒に学んで、この危機を絶好の機会に変えましょう。