特任教授 法人事務局広報参与

弓削 雅人

Masahito YUGE

専門:
ジャーナリズム論、メディアリテラシー その他:ドイツ、現代欧州の政治と社会

神奈川県出身、慶應義塾大学法学部政治学科卒。中日新聞社に入社。ベルリン特派員、社会部、選挙調査室などで国内外の取材・編集の現場を経験。電子メディア局でデジタルコンテンツの運営、中日スポーツ総局でネットニュース配信に携わる。名古屋外国語大学ではメディア事情、欧州のニュースを読み解き伝えています。また、マスコミ業界研究グループの顧問も務めています。

メッセージ

キミがいまもっとも情熱を傾けられることは何ですか?
身近なことでも全世界に関係することでもいい。孤独な闘いでも仲間を巻き込むことでもいい。関心を持ち続けて、夢を描き続けられるのであれば、それはキミの個性そのものだと自信を持ってください。

グローバル共生学科はキミの情熱をキミ自身の人生にどう生かせるか、どう社会の中で共生していけるか、先生や先輩と一緒に考えて、追い続けることができるワクワクする場所です。

グローバル共生学科ならではの学びとは?

多言語、多文化が一つの社会に混在しているのがごく当たり前の世の中です。さまざまな価値観や正義が私たちの周りを取り囲んでいます。跳ね除けたり打ち負かしたりでは社会が持続可能でいられません。互いを科学的かつ論理的に理解し、対処して最大の幸福と利益の創造に取り組んでいかなければなりません。グローバル共生学科は、国際的な政策論争から地域の活力創生まで、幅広い課題をテーマに据えて社会のあり方、進む方向を考えられるユニークな学びの場を提供しています。

専門分野

ジャーナリズム論・メディアリテラシー

私たちが接する情報は質・量ともに拡大し、既存メディアはその発信力が大きな曲がり角に来たと言われて久しくなりました。いまやインターネットやソーシャルメディア(SNS)が人々の情報源の主力です。SNSを使って不特定多数に向けて発信する「ひとりメディア」は拡散力の面では既存メディアを凌駕しています。一方で、受け手側が情報にどう向き合い正確に理解していくのか、メディアリテラシーの必要性を指摘する声も止まりません。ジャーナリズムとしての報道の「広くて深い」理解と的確な分析力をどう養えばいいのかを、新聞報道、デジタルコンテンツ、ネットニュースと多様な現場を経験した立場から考えています。

ドイツ、現代欧州の政治と社会

第二次世界大戦後の欧州にイデオロギー対立を軸に現出した政治体制と域内国際関係は、ドイツに分断国家を誕生させました。その矛盾は各国に民主革命を巻き起こし、ドイツでは国家統一に到りました。しかし、戦後連綿と続いてきた欧州統合重視の域内国際関係は、経済統合を経験してもなお、必ずしも不可避で持続可能な道程ではないとの意思表明が顕著になっています。欧州連合(EU)が目指す政治統合は遠のき、英国の離脱、各国の右傾化はEUの屋台骨すら危うくしています。米国、中国、ロシアとも違う価値観を持ち、4億人以上の人口を擁する欧州はどこに向かうのか、域内各国の政治情勢分析を積み重ねて考察しています。

学科で教えていること

「世界理解の方法」では、歴史を振り返る意味と、歴史を築く意義を学生とともに考えています。2024年は東西冷戦の象徴だった「ベルリンの壁」はなぜ構築されたのか、そして冷戦終結の象徴になった「壁開放」はなぜ起きたのかに焦点を当てました。「日本理解の方法」では、ネットメディアの実相と世論調査の方法論を通じて現在の日本社会の一断片を学生とともにとらえます。

学科の他の教員のゼミ授業の「訪問講義」もしています。専門分野の内容のほか、私の前職であるメディアでの仕事の経験からお話しています。新しい視点や多様な知見を提供し、学生の研究を豊かなものにしてもらおうと努めています。2024年6月の欧州議会選挙に際しては、あるゼミで、経済、社会、移民政策などの検証分析、メディアの世論調査結果、ドイツを中心にした欧州での報道で得た観点から、多面的・重層的に欧州の右傾化と反発の背景を学生に紹介しました。

学科・学生の研究・活動の成果をメディアで紹介してもらう法人広報参与の仕事とリンクさせて、学生が社会から評価を得られ、就職活動にも有力な実績を獲得できる機会づくりにも力を入れています。2023年度には、授業から派生した活動として、模擬国連大会に出場した学生グループやSDGs実現に役立つ企業商品開発に参加した学生たちの成果などが新聞で紹介されました。

担当科目

  • 「世界理解の方法」「日本理解の方法」(ともにオムニバス講義)
  • 「ジャパンスタディーズ903」(特殊講義、全学開放=2年次以降)

「ジャパンスタディーズ903」は国際日本語教育インスティテュート(IJLE)在籍の留学生と全学部の学生が受講可能。留学生とチームを組んで日本社会、文化、芸術など自ら選んだテーマを調べ、インタビューなどのフィールドワークで取材し、ジャーナリスティックなニュースの視点から記事を作成します。成果は英字新聞「NUFS Times」として発行されています(バックナンバーはこちらから閲覧可能です)。

「日本語ジャーナリズム」は世界教養学部 国際日本学科専修科目で全学開放ではありません。聴講は可能です。

主な学術論文

  • 「年代・エリアを限定したネット調査の課題-18・19歳×中部エリアの事例-」(単著、2016年9月16日、第6回世論・選挙調査研究大会、埼玉大学社会調査研究センター「政策と調査」11月号)

最も影響を受けた場所

大学生だった40年前、検問所の旅券審査と通貨両替を通り抜けて入った東ベルリンの街路はどこも煤(すす)け、50メートルおきに立つ兵士の威圧感は小説そのものでした。グロテスクに行く手を阻む「ベルリンの壁」に突き当たると、私は地中から湧き上がってくるような歴史のマグマを感じました。ここで何が起き、誰の叫び声が上がったのか、どんな思いがコンクリートにしみ込んでいるのだろうか…。

壁崩壊から20年が経ったころ、記者として同じ場所に立った時、私が感じたのはその風景の激変ぶりよりも、足下から伝わるあの時と同じ歴史のマグマでした。ドイツ、欧州での仕事はその理由を尋ねて回ることだったと振り返っています。

世界中、どこへ行ってもキミがここだと感じる場所は、足下にこのマグマが迫ってくるはずです。それを感じ、自分を突き動かすエネルギーにしてほしい、そう思います。