教授

宮川 公平

Kohei MIYAGAWA

専門:
国際法、国際経済法、国際環境法 その他:国際協力、地域開発、多文化共生

名古屋城近くの病院で生まれて尾張旭という小さな町で成長。愛知県立大学外国語学部英米学科でなぜか国際法に惹かれ、名古屋大学大学院国際開発研究科に進学。大学院時代に、法学研究科の先生たちや法政国際教育協力研究センターを中心とした法整備支援の調査で、カンボジアやベトナム、WTO(世界貿易機関)などを訪問。2005年に名古屋外国語大学に赴任し、以来、ゼミの学生たちと地域おこしや多文化共生に係る研究活動を行っている。

メッセージ

グローバル共生学科での学びは、質・量ともにハードですが、心配する必要はありません。課題への取り組み、学友との議論、学外研修での地元の人たちとの意見交換、高校までの学びでは味わったことがない、途中で心が折れそな緊張感漂う雰囲気の中で、結果を出していくことが求められることもあります。でも、最後には達成感が感じられるため心配しないでください。卒業して社会人として旅立ったときに、その経験があなたを強くしていたことに気づき、たくましく生きていけることを実感することでしょう。

グローバル共生学科ならではの学びとは?

大学での学びをどのように考えていますか?自分が興味を持つことを専門的に学ぶ場。自己成長の場。多様なバックグラウンドの友人をつくる場。いろんな捉え方がありますが自分中心の捉え方が多いかもしれません。でも、大学で学んだことや経験したことは、自分の中だけで完結させるものではありません。ゆくゆく、社会人としてそれらを活用して社会に還元していくものです。グローバル共生学科は、取り組んでいく事柄を「自分事」として捉え、関わっていく人や企業、団体に寄り添った対応力を養うことができるところです。

専門分野

国際法の中でも、国際経済法と国際環境法の接点となる領域を専門としています。どういった領域なのか「日本人がエビを食べれば、ウミガメが絶滅する」を例に説明します。これはなんのことか分かりますか?

日本で消費されるエビのほとんどは輸入で、1人当たりの消費量はアメリカに次いで世界2位です。国際経済法では貿易は「自由」を原則とします。そのため、国際取引の対象となるエビも自由に輸出入できます。エビを輸出する国は、たくさんエビを獲ろうとします。しかし、エビを獲るときにウミガメも混獲してしまいます。ウミガメは、絶滅が危惧されるため国際環境法で国際取引禁止の対象になっています。

では、ウミガメを保護するためにはどうすれば良いでしょうか?エビの取引を制限する??でも、エビで生活している人はどうなる??このように、国際経済法と国際環境法は場合によって緊張関係をもたらします。その調整を考えていくのが私の専門領域の面白いところです。

最近は、地域創生科目プログラムの1つの中津川をフィールドとしてゼミ生たちと「外国人が一人で来て一人で帰ることができる」をテーマに、いろんな意味でバリアフリーなまちづくりのお手伝いをしています。

学科で教えていること

担当科目は、国際法、国際協力論、ジェンダーと開発などです。現場での学びが大切だと考え、地域創生科目の中津川プログラムとフィリピン・プログラムを担当しています。

国際法では、「法」を切り口に国際社会で起こっている様々な問題を考えていきます。国家の行動の背景にある規範の作用が分かると、国際社会の様子が見えやすくなります。

ジェンダーと開発では、国際協力や国際開発の支援でも、得られる利益や機会にジェンダー格差が生まれている現状を踏まえ、その克服方法について学びます。

地域創生科目でフィールドとする中津川では主に訪日外国人を対象としたバリアフリーなまちづくりを学び、フィリピンでは貧困世帯の女性たちの生活改善や路上生活をする子どもたちの教育・就労支援について実践的な学びをします。

担当科目

1年生対象

  • アカデミックスキルズ
  • グローバル共生概論

3・4年生対象

  • 国際ガバナンス演習A(国際法)
  • 国際協力論
  • ジェンダーと開発
  • グローバル共生演習B(コミュニティ研究)

地域創生科目

担当するゼミのテーマ

『法学から私たちの社会を考える』

ゼミでは、法学のなかでも「人権」を通して社会の既存の価値観を問い直し、より良い社会づくりのあり方を一緒に考えていきます。
グローバル化が進み世界中の情報が瞬時に飛び交う現代社会では、私たちの社会にある価値観は急速に変容しています。居住する外国籍あるいは外国をルーツの人びとが増加し、多文化共生を前提とした社会となりつつある現代日本もそうした変容の一例でしょう。しかし、法制度を中心とした社会制度は、時代の変容に柔軟に対応できているわけではないため、理不尽な思いをしている人たちも少なくありません。

「人権」が大切なことは理解できるけれど、実社会では個別の権利や利益が衝突して、「あちらを立てればこちらが立たず」なんてこともあります。たとえば、男女の平等を促進するために選挙や入試で「女性枠」を設けるアファーマティブ・アクションを導入すると男女の平等を記した憲法に違反する可能性があります。また、兵役義務を男性に限定する国は多いですが、それは女性の職業選択の自由を制限していないでしょうか?このように、「人権」を扱うことで、社会が「是」とする価値観が本当にそのままでよいのかを見直すことができます。

また、現在研究室で進めている岐阜県中津川市での域学連携(地域おこし:中津川プログラム)は、地域おこしや多文化共生の現場を訪問しながら必要な研究手法・社会調査法を学び、地元のみなさんとの交流を通して社会人として必要なコミュニケーション能力を磨く機会になっています。

主な学術論文

  • 「GATT/WTOと環境保護に基づく貿易措置:PPM(生産工程方法)に基づく貿易措置のGATT適合性を中心に」『国際開発フォーラム』21号、2002年

主な著書

  • (共訳)S・オーバーテュアー、H・E・オット『京都議定書:21世紀の国際気候政策』シュプリンガー・フェアラーク東京、2001年

最も影響を受けた人

振り返ってみると、大学院でお世話になった国際法の先生たちに多く影響を受けたと感じます。私にとっては人生の師匠たちみたいな存在で「あれをやれ、これをやれ」と、おっしゃることは一切ありませんでした。一見すると放置にも見えるかもしれません。でも、大学や大学院は、自分が望んでやってきた場所です。そして、多くを学ぶうちに、自分の内側から沸き起こる研究(学びたい、明らかにしたいという欲求)への衝動に突き動かされていきました。

ひとたびその衝動に突き動かされてアウトプットした研究内容への師匠たちの言葉は、とても重く厳しいものがありました。大学院では「研究の成果=社会貢献」である以上、それに見合ったことができていないのであれば当然のことです。師匠たちの研究へ取り組む姿勢や既存の価値を問い直す姿を通して、自分の研究を自己満足で終わらせることがないよう、少しでも社会の誰かの満足を満たせるような貢献をしていくべきである、という姿勢が身につきました。それが、自分の研究スタイルや学生たちへの指導に活かされていると思います。