路上生活の子どもや貧困層の女性について考える

フィリピン・プログラム

フィリピン・プログラムでは、多文化コミュニケーション能力と状況把握力・課題発見力・問題解決力を磨き、学生へ多文化共生社会を担うアクティブな人材への成長を促します。フィリピンプログラムは、地域創生科目プログラムの中では唯一、海外研修(フィリピン現地)と国内研修(主に名古屋地区)というように国外と国内両方での研修で構成されています。海外研修では、「貧困」「貧富の格差」「ジェンダー平等」などをキーワードに、「開発」の視点で現地を訪問・調査します。国内研修では、「多文化共生」「外国ルーツ」「異文化理解」などをキーワードに、「共生」の視点で名古屋とその周辺のフィリピン人コミュニティや外国ルーツの人たちのコミュニティを訪問して話を伺います。

フィリピンではマニラのパヤタス地区をフィールドに、路上生活を余儀なくされる子どもや、ごみ山でスカベンジャ―(ごみを漁って売れるものを探し、生計を立てる人)として働かざるを得ない貧困層の女性を訪問します。フィリピン社会が抱える社会構造的な問題を知るだけでなく、学科の授業を通して深めた知見を生かし、実地で問題の解決策を考えます。また、名古屋では、在名古屋(在名)フィリピン人コミュニティへの聞き取りを行い多文化共生へのアプローチを学びます。また、国内研修を一緒に企画している認定NPO法人アイキャン(名古屋)のスタッフより、フィリピン研修で訪問する路上生活の子どもや貧困層の女性の背景知識について、レクチャーを受けました。

スケジュールの例

事前研修

学内、学外での座学

  • フィリピンを知る
  • ボランティアとは
  • 社会調査法
  • 訪問地域についての事前レクチャー

実地研修

1日目
マニラ市内見学
2日目
フェアトレード財団訪問・視察
3-6日目
スラム街でのボランティア・聞き取り、国立博物館訪問、マニラ市内視察
7日目
マニラ市内観光

事後研修

  • 実地研修振り返り
  • 大学での成果報告会

事前研修

事前研修では、学内でフィリピンの現状や歴史についてしっかりと学び、1人2〜3つテーマを選んでプレゼンテーションを行います。

過去の参加学生が選んだトピックの例

  • フィリピン語(タガログ語)
  • フィリピンのムスリム
  • フィリピン革命
  • マルコス政治
  • アメリカ統治時代
  • 教育制度
  • フィリピン人のルーツ
  • 国民経済と小口経済
  • 女性の地位と役割

プレゼンテーションの様子

認定NPO法人アイキャンのスタッフによるレクチャーを受ける様子

実地研修

実地研修の内容は開催年によって異なるため、ここでは2023年に実施した内容をご紹介します。2023年のフィリピンの実地研修では、フィリピン、マニラ北部のケソン市を中心に、旧ごみ山のパヤタス地区や路上生活者が多く住むマヨン通りを中心に活動を行いました。

旧ごみ山のパヤタス地区での活動は午前と午後に分かれており、午前は、元スカベンジャーで現在はフェアトレード女性生産者団体の「SPNP」で働く女性と、別の地区のごみ山(ルソン島モンタルバン)でスカベンジャ―として働く貧困層の女性から、それぞれこの地区で暮らすようになった背景、生活状況と抱える問題の聞き取りをしました。午後は、SPNPの代表から、団体が設立されるまでの経緯と現在の状況と抱える課題について聞き取りを行いました。

元スカベンジャーの方から、パヤタス地区でのごみ拾いの生活とフェアトレード製品の生産に携わるようになった経緯について説明を聞いている様子

マヨン通りでは、路上生活をする子どもの様子を見るだけでなく、聞き取りをして生活実態を知ることができました。両親や兄弟がいても、彼らの収入が十分ではないために路上で物売りをする子どもや、両親がおらず親戚と暮らしていたが、その親戚にも捨てられ路上生活を余儀なくされた子どもなど、さまざまなバックグラウンドを持つ子どもたちの生活実態を知る機会となりました。マヨン通りを訪問した後は、路上生活の経験者で、現在はKALYE(カリエ)という協同組合を起ち上げて路上生活者の支援活動を行う方からお話を聞きました。KALYEはパンやコーヒーなどの製造・販売を通して、路上生活をしている若者たちに職業訓練の場とお金を稼ぐ手段を提供しています。

マヨン通りで路上生活をする子どもについて支援団体のスタッフから説明を受けている様子

路上生活の若者たちへの職業訓練をするKALYEのスタッフから活動内容の説明を受けている様子

また他の日に、学生たちは、路上生活をする子どもの保護施設に宿泊しながら、交流学習をおこないました。研修最終日の前日の夜には、保護施設の子どもたちがどのような経緯で保護されたのか、一人ひとりの子どもについて施設のスタッフから話を聞きました。現地での研修を通して、フィリピン社会が抱える社会構造的な問題を知る機会になりました。

国内研修では、在名フィリピン人コミュニティが運営する国際子ども学校、安城市在住のムスリムの子どもたちへの支援をしている市民活動団体「あんじょうまざりん」、中学生の時にフィリピンから来て日本に住むことになった方への聞き取りなど、多文化共生に関連する聞き取りを行うことができました。

国内研修:中学生のころに突然日本で暮らすことになった方から、日本での生活の苦労やアイデンティティの悩みなど、外国にルーツを持つ人たちが抱える課題についてお話を聞きました

「あんじょうまざりん」と、その支援を受けるムスリムの女性から、日本での暮らしで感じた不安や困りごとについて話を聞きました

事後研修

事後研修は、研修全体を振り返り、自分たちの学びを成果としてアウトプットする重要な機会になります。研修終了後、他の研修プログラムに参加したすべての学生たちと一緒に、学内で報告会を行います。報告会用の発表資料を作成すると同時に、次年度の研修参加者に向けた課題の提示も行います。

事後研修を終えることで、研修全体として、インプット(基本的な学びと計画)、実地体験(現場での試行錯誤)、アウトプット(成果報告と次年度に向けた課題の整理)という流れができあがります。

事後研修の様子:一人ひとりが発表用資料づくりに取り組みました

事後研修終了後、みんなでフィリピン料理を食べに行きました

過去の報告会資料の例

2018年春の事後報告会のためのプレゼンテーション資料。

資料を見る(PDF)