日本の多文化共生や地域社会のあり方を考える

中津川(本町)プログラム

中津川(本町)プログラムは、2018年から岐阜県中津川市の本町地区をフィールドにして、日本の多文化共生や地域社会のあり方を考えることを目的におこなっています。プログラムは、事前研修・実地研修・事後研修の三部から成っています。実地研修では現地に赴き、歩く・聞く・話す・体験することを通して地域が抱える課題を認識し、地域のみなさんとともに地域の将来について考えます。

本町地区は、中山道の宿場町のひとつ、中津川宿の中にあり、古くから飛騨、木曽、尾張を結ぶ交通の要衝として、経済・情報・物流の中心地として発展してきました。昔ながらの宿場町の街並みが一定程度復元され、コロナ禍以前から、中山道を歩く訪日外国人の往来も見られます。そうした実情を踏まえ、本町地区にはカフェが併設されたゲストハウスが作られました。以降、訪日外国人客だけでなく、国内の若い人の往来も増え、今では地元の若者がお店を開き活況を呈しています。

他方で、中津川は街の中心地でありながら中津川駅からは距離があり、大型量販店などの進出で商店街が衰退し、商店の経営者の高齢化や後継者不足に悩むなど、日本各地で見られる地域共通の課題があります。プログラムでは本町地区の「過去・現在・未来」を意識し、じっくりと聞き取り調査を行い、地区が抱える課題を明確にします。さらに、学生ならではの視点を生かして解決策を考え、研修期間中に実行に移すだけでなく、中期・長期スパンで地元の皆さんと一緒に取り組むべき課題を考えていきます。また、地域のみなさんとの関わり合いや現地での滞在を通して地域の魅力を味わってもらうことも目標としています。

スケジュールの例

事前研修

学内での座学、中津川での事前合宿

  • 地元学
  • ツーリズムと地域づくり
  • 前年度参加者との情報共有
  • 地元紹介

実地研修

1日目
中津川市役所表敬訪問、地域を知る
2日目
聞き取り調査、マッピング
3日目
聞き取り調査、マッピング
4日目
おいでん祭お手伝い
5日目
聞き取り調査、マッピング
6日目
地元での成果報告会など

事後研修

  • 実地研修振り返り
  • 大学での成果報告会
  • 合同祭でのポスター展示

事前研修

事前研修は学内で実施するものと、現地で宿泊しながら実施するものがあります。学内の事前研修では、日本における地方創生の課題や問題、その背景を学びます。「地元学」や「関係人口」、近年話題となっている「オーバーツーリズム」といったキーワードをもとに中津川についてじっくり学んだ後、実際に現地を訪問します。宿泊型の事前研修では、関連の施設や団体、地区の住民の皆さんにお話を伺いながら、地域の魅力を体感します。また、実地研修でどんな取り組みを行うのかも話し合います。この話し合いでの内容を踏まえ、学内の事前研修を再度実施し、実地研修に向けた準備を行います。

宿泊型の事前研修では、中津川にゆかりがあり、第二次世界大戦中にユダヤ人に「命のビザ」を発給したことで有名な杉原千畝の記念館も訪問します。

杉原千畝記念館の館長からレクチャーを受けている様子

市街区の見学

実地研修

実地研修では、事前研修で準備したことを中心に、研修を行います。

研修で最も大切にしているのは、地元の皆さんへの聞き取り調査と一日の振り返りです。地元の皆さんへの聞き取り調査は、本町地区が現在抱える課題の背景や将来像を考えるきっかけを与えてくれます。また、活動を行ったその日に一日を振り返ることで、事前研修で学んだ地域創生や多文化共生に関する学びとの接点を見出し、聞き取りが十分にできなかったところや、新たに得た知見を整理し、翌日以降の研修で活かせることを確認します。

また、この研修では、同じ時期から同地区で活動をしている東京工業大学大学院真野研究室(都市デザインを専門に研究)の皆さんと交流し、多くのことを学ばせてもらっています。2023年は中津川市中心市街区の活用について、市民の域式調査を行うワークショップを一緒に実施しました。

実地研修の内容の例

  • 過去・現在・未来から見える本町の将来課題
  • アフターコロナを見据えた本町の課題整理
  • コロナ禍に新規出店する企業と市民の認知度調査
  • 本町地区の10年後・20年後
  • 中津川市中心市街区活用計画と訪日外国人対応

本町中山道景観協議会の原会長から本町地区の景観保存の歴史について学んでいる様子

はざま酒造にて酒蔵見学

東京工業大学大学院真野研究室との協働:市街区の活用について住民の皆さんに意見を書いてもらうワークショップの様子

はざま酒造とのコラボ企画で作成した訪日観光客向けPOP制作。施設案内は英語版も作成しました

地元の皆さんを招いての成果報告会。毎年多くの方々に参加いただいています

事後研修

事後研修は、研修全体を振り返り、自分たちの学びを成果としてアウトプットする重要な機会です。他の地域・国のすべての研修プログラムに参加した学生たちと一緒に、学内で事後報告会を行います。報告会では発表資料を作成して実施内容を報告すると同時に次年度の研修参加者に向けた課題の提示も行います。

事後研修を最後に、インプット(基本的な学びと計画)、実地体験(現場での試行錯誤)、アウトプット(成果報告と次年度に向けた課題の整理)という流れで研修の三部構成が完成します。

事後研修の様子。手前のチームは実地研修中に地元住民の皆さんへ聞き取りをした内容をまとめ、奥のチームは事後報告会の発表用スライドを作成しました。

過去の報告会資料・ポスター展示の例

2022年夏の事後報告会のためのプレゼンテーション資料。

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2019年夏の合同祭向けに作成したポスター資料。

資料を見る(PDF)