共催セミナー「大学教育における地域連携の実践と関係人口」が開催されました(5月14日)

2023年5月15日

2023年5月14日(日)、名駅キャンパスME11教室にて、名古屋外国語大学世界共生学部世界共生学科、名古屋外国語大学グローバル共生社会研究所、NPO法人国境地域研究センター、北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター境界研究ユニット、人間文化研究機構東ユーラシア研究プロジェクト北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター拠点が共催するセミナー「大学教育における地域連携の実践と関係人口」が開催されました。

 

本セミナーでは、大学教育の中で地域連携の実践をしている5名の講師・コメンテーターをお招きし、昨今、話題になっている「関係人口」論と絡めながらそのあり方について議論をしました。

 

著書『関係人口の社会学』が好評を博している田中輝美(島根県立大学)は、関係人口についての理論的内容と、人口減少時代に大学生が地域での関係人口となる、そのための仕掛けを大学が行う上での「強み」と「弱み」についての考察がありました。ひょっとしたら、関係人口概念は、日本だけでなく国外での地域連携の取り組みにも適用できる可能性があると筆者は感じています。大学教育と関係人口との関係性について、分かりやすくその重要性を学ぶことができた報告でした。

 

地田徹朗(名古屋外国語大学)は、世界共生学科独自の学びである地域創生科目の概要と北海道白老町での北海道プログラムの実践について紹介し、外国語大学ならではの地域連携のあり方について模索する報告を行いました。地域に新たな風を吹かせる「風の人」(あるいは、「よそ者」)やそうなるポテンシャルがある今の若者世代は、基本的に「個人主義」をベースに動いており、この点を考慮した上で地域に入っていく、地域との連携を模索する必要があるとの指摘がなされました。

 

池炫周直美(北海道大学)は、北海道大学公共政策大学院による国内外での豊かな地域連携の実践例について紹介しました。池の報告では、公共政策大学院ならではの地方で活躍する「人づくり」の実例が強調されていたことが印象的でした。地域連携にせよ地方創生にせよ、最後は「人」であり、それをいかに「育てる」のかが大学の使命であるということを改めて実感させる報告でした。

 

石田聖(長崎県立大学)は、元々は競争的資金をベースとした全学的な取り組みであった「しまなび」プログラムの成果・課題、そしてプラスマイナスの評価について詳しい説明をし、その後、報告者本人の五島列島奈留島での「After しまなび」の取り組みについても説明がありました。この大学という枠から外に出ての報告者の取り組みである奈留島でのプロジェクトにおける「参加型教育アセスメント」の手法は、教育実践を一方通行にさせないために非常に重要だと筆者は感じました。

 

花松泰倫(九州国際大学)の報告は、大学がもつリソースによって地域連携や地域での実習形式での教育のあり方も変わってくるし、地域の「内側」に入り込むことでむしろ問題が生じてしまうということついて、実例と共に率直な指摘がなされました。花松の事例からは、地域連携や地域おこしでのありがちな美談だけでなく、失敗例から多くを学ぶ必要があること、むしろ失敗のtipsを積み上げていくことの必要性を感じました。

 

これら5つの報告に対して、古川浩司(中京大学)からコメントがなされました。フロアからの質問も数多く寄せられたのですが、時間の関係でディスカッションに時間が割けなかったことは組織側としての反省点となりました。

 

名古屋外国語大学グローバル共生社会研究所及び世界共生学部世界共生学科では、今後とも、大学と地域とを結び地域課題の解決を模索する諸々の実践を展開してゆきます。今後の活動にご期待いただければと思います。