学部長からのメッセージ世界共生学部が目指すこと~判的思考と共感力~

グローバル化時代の共生にむけて

 グローバル化とローカル化が同時に進む現代、我々はかつて経験したことのない様々な政治的、経済的変化に直面しています。その変化は、グローバル化を推進してきた中心地である欧米諸国でもみられます。平和、自由、民主主義の発信地である欧米諸国で、その流れを押し戻すような現象が見られるのはその一例です。
 このような変化の要因を理解するためには、世界各地で起きている出来事を、グローバルな視点から見ると同時に、地域の人々の日常生活に焦点を合わせた地域研究的視点から見ることが必要です。そのような複眼的視点を「グローカル」な視点といっても良いでしょう。そのような視点を持ってはじめて、グローバル化とローカル化が同時進行する現代の事象をうまく理解できるのだろうと思います。
 外国語教育に長い歴史を持つ名古屋外国語大学が2017年に世界共生学部を設置したのは、このような複眼的視点を持ち、新しい課題に対する具体的な解決策を提起できる人材が必要だと考えたからです。具体的な解決策の提起を行うには、地域の歴史・文化に対する深い理解の上で行われる地域研究的調査能力と、社会科学的素養に基づいて分析し考察する能力の両方が求められます。本学部が目指すのはそれらの能力の向上です。
 言うまでもなく、グローバル化が進む現代は「多文化共生社会化」の時代です。日本においても「多文化共生社会化」が進んでいます。日本人が世界各地で暮らすことも、各国から様々な人たちが日本に来て暮らすこともめずらしいことではありません。現在我々が取り組むべき最重要課題の一つが「共生」だということは広く認められています。にもかかわらず、本邦の大学教育において「共生」を中心に据えて教える学部はまだ多くはありません。本学部は数少ない学部の一つです。
 本学部は、歴史学や社会科学が研ぎ澄ましてきた批判的思考を学習するとともに、地域研究アプローチが培ってきた共感力を鍛えることで、世界の人々の平和的な共生社会の実現に貢献する学部として発展したいと考えています。

目指せ、調査・分析能力をもつアクティブな人!

 本学部では、外国語の習得はもちろん、世界各地の政治や経済そして歴史や社会について深く学びます。その上で、地域研究アプローチに必須な現地体験や実践を通して、現代的課題に具体的な解決策を提案できる能力を向上させていくことを狙っています。
 そのためには語学力に加え、地域貢献や国際交流活動などへの実践的参加を通して、コミュニケーション能力や地域調査能力さらに社会科学的分析能力を高め、総合的な実行(遂行)力を高める必要があります。
 AI技術の発達が著しい近年ですが、コンピューターが得意とする仕事はフレームワークが決まった仕事です。しかし、これからの共生社会において重要性を増してくるのはフレームワークの決まっていない課題です。そのような課題に対して、自らフレームワークを考え出す能力を持って挑戦する人材が育って欲しいと考えています。

学部長紹介

島田 周平 SHIMADA, Shuhei

学歴
東北大学理学部地理学科卒業(1971年)
東北大学 理学博士(1989年)

職歴
アジア経済研究所  入所  調査研究員(1971~1983年度)
東北大学 理学部 助教授(1984年~1987年度)
立教大学 文学部 助教授(1988年度)、教授(1989年~1991年度)
東北大学 理学部 理学研究科  教授 (1992年~1996年度)
京都大学 大学院人間・環境学研究科 教授(1997年度)
京都大学 大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 教授(1998~2011年度)
東京外国語大学 大学院総合国際学院 特任教授(2012~2016年度)
名古屋外国語大学 世界共生学部 教授 (2017年度~)

著書
島田周平 (1992)『地域間対立の地域構造-ナイジェリアの地域問題-』 大明堂
島田周平 (2007)『アフリカ 可能性に生きる』 京都大学学術出版会
島田周平 (2007)『現代アフリカ農村-変化を読む地域研究の試み-』 古今書院
加藤博、島田周平編集 (2012)『世界地名事典3:中東・アフリカ』 朝倉書店
島田周平、上田元編著 (2017)『世界地誌シリーズ:アフリカ』 朝倉書店
島田周平 (近刊)『物語 ナイジェリアの歴史-「アフリカの巨人」の実情-』 (中公新書)中央公論新社